鋳物の歴史~太古の時代からの人類の知恵~ VOL.2

鋳物の歴史

王朝や宗教、時の権力と密接なつながりを持ちながら、高度な芸術品を作るまで高まった鋳物の技術ですが、今度は庶民生活への広がりから見てみましょう。

融点が低くて扱いやすい青銅を使った鋳物は、5000年前には作られていました。融点が高く加工難度の高い鉄を材料とする鋳物は、今から2500年前頃に中国で作られはじめます。

梵鐘
南部鉄器

これらの技術は時代が下るとともに日本にも伝えられ、弥生時代には祭祀用の青銅器が国内でも作られ始めたと考えられています。

金属製品は長い間、希少で高価なものでした。鋳物師(いもじ)と呼ばれた職人は、時の権力者や有力寺院の管理、保護の下、鍋、釜、梵鐘などの製造に従事します。

室町時代以降には、各地の領主に請われて移住、技術が全国に広がり、現在に伝わる地場産業となるものもあります。岩手県の南部鉄器などが代表例です。

鋳掛屋

古代から続く鋳物は砂や泥を型材として利用し、比較的簡単、自由に形を作りやすい反面、制約もありました。出来上がる製品が肉厚で重い、量産品として精密につくるには限界があるなどです。

家庭用品の鍋、釜は、長らく鋳鉄製が中心で、穴が空いたりすると修理して大事に使うものでした。その為に、専門の鋳掛屋と呼ばれる修理業者が存在していました。

しかし、昭和の時代になるとプレス加工(金属板材に力を加えて形をつくる)により、薄くて軽いものが大量に安く作れるようになり、鋳物鍋は急速に取って代わられてゆきます。

VOL.3へ続く